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土木業や建築業に遠隔臨場の導入が推進されている理由

日本の土木・建設業では、DXや働き方改革の一環として遠隔臨場の導入が進められています。

慢性的な人手不足や働き手の高齢化といった課題を抱える土木・建設業では、遠隔臨場による業務効率化が解決手段として注目されているのです。
また人との接触機会を減らせる遠隔臨場は、新型コロナウイルス対策の手段としても需要が高まっています。 厚生労働省が定めた新型コロナウイルス感染予防ガイドラインでも、遠隔臨場が推奨されています。

参照元:厚生労働省
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001412231.pdf

遠隔臨場とは

臨場とはその場所に行くことを意味し、ウェアラブルカメラやオンライン会議システムなどを活用して離れた場所から現場確認することを遠隔臨場と定義しています。
国土交通省の「建設現場の遠隔臨場に関する試行要領」によると、「段階確認」「材料確認」「立ち合い」が遠隔臨場の具体的な対象業務です。

例えば材料確認では現場作業員がウェアラブルカメラで材料の製造ロットや寸法などを撮影し、WEB会議システムで監督職員が遠隔地から確認することができます。
本来は監督者が現地に行って現物を確認する必要がありますが、遠隔臨場なら直接現場に行く必要はありません。 国交省は建設業の生産性向上を目標に「i-Construction」を推進しており、その一環として遠隔臨場の導入も進めています。

国も推奨する遠隔臨場を導入するメリットは?

遠隔臨場を導入することで期待できるメリットについて、一つずつ見ていきましょう。

移動時間の短縮

遠隔臨場は事務所に居ながら現場立ち合いができるため、移動時間を短縮できるのが大きなメリットです。
仮に事務所から現場まで1時間かかる場合、往復で2時間もの移動時間を短縮できることになります。複数の現場を同時進行している場合移動時間短縮のメリットはさらに大きくなり、業務効率向上につながります。

時間に遅れる心配がない

公共交通機関のトラブルや渋滞による遅刻の心配がないのも、遠隔臨場ならではのメリットです。
移動のロスを見越して早めに出発する必要がなく、遅刻による現場の待機時間も発生しません。朝の通勤ラッシュや帰宅時間の慢性的な渋滞の影響を受けやすい、車移動の臨場は遠隔化によるメリットも大きいでしょう。

スケジュール調整しやすい

一回の臨場にかかる時間を短縮することで、スケジュール調整が容易になるのも遠隔臨場の意外なメリットです。
事務所と現場が遠いと立ち合いだけで半日以上かかってしまうことも珍しくありません。一回の臨場にかかる時間が長いとスケジュールを圧迫し、他の予定との調整も難しくなります。複数の職員が立ち会うケースでは、さらにスケジュール調整は困難になるでしょう。

遠隔臨場なら短時間で済むため、日程の選択肢が増えて効率的なスケジュールを組むことが可能になります。

コストの削減

遠隔臨場を導入することで、移動中の人件費やガソリン代といったコストを削減できるのもメリットの一つ。
本来他の業務ができない移動中を書類整理などに充てることで、残業時間が減ってコスト削減につながる効果も期待できます。また遠隔臨場は一般的なスマートフォンやタブレットを使うことも認められているため、低コストに導入できるのも魅力的なポイント。

人手不足解消

遠隔臨場で業務効率を向上することで、人手不足解消効果も期待できます。
移動時間が無くなることで、今までと同じ人数・業務時間でも多くの現場をこなすことができます。また残業が減ることで労働環境が改善し、退職率の低下や新入社員の増加が人手不足解消につながる可能性も高いです。

ノウハウの共有と人材育成

遠隔臨場に若手人材も同席すれば、実際の現場を見ることでノウハウを共有でき人材育成にもつながります。
熟練度の高い監督職員の遠隔臨場は、現場でしか学べないことをたくさん吸収するチャンスになるでしょう。また若手職員の現場にベテラン職員が遠隔臨場で参加し、アドバイスを与えるといった方法も考えられます。遠隔臨場の様子を録音しておき、新人研修などで資料として活用することも可能です。

コロナ渦や事故防止の対策にもつながる遠隔臨場の導入

遠隔臨場は時間・コスト的なメリットだけでなく、現場の安全性向上やコロナ対策といった効果も期待できます。

接触機会を減らして感染症対策できる

遠隔臨場の導入で監督職員の移動と現場入りを無くすと、人との接触機会を減らせるため感染症対策につながります。
公共交通機関で移動する場合不特定多数の人と接触するため感染リスクが高くなり、そのまま臨場すると現場に広がってしまう恐れがあります。逆に現場の感染症を事務所に持ち帰ってしまうパターンもあるでしょう。

遠隔臨場で人の接触機会を減らすことで、現場・事務所両方の感染症対策になるのです。公共施設などスケジュールの厳守が求められることも多い建設現場にとって、遠隔臨場による感染症対策のメリットは大きいです。

確認精度の向上で事故リスク軽減

遠隔臨場は本来の移動時間を現地での活動時間に充てることができ、人為ミスや確認漏れによる事故リスクの軽減にもつながります。長時間の運転や混雑する公共交通機関での移動疲れが無いのも、人為的ミスの防止になるでしょう。

一回の負担が少ないため立ち合いの機会を増やすこともでき、結果的に確認精度の向上も期待できます。またリアルタイムコミュニケーションに長ける遠隔臨場なら、気になったことをすぐ確認したり指示したりすることも可能です。あやふやな理解のまま現場作業が進行したり、間違った情報が伝わったりするのを防ぐことで、人為的なミスや事故を未然に回避しやすくなります。

また前述したように遠隔臨場はベテランによるサポートも容易なため、経験の浅さからくる事故を防げるのも大きなメリット。複数の職員が遠隔臨場でチェックするなど、事故が発生しにくい環境づくりも可能です。

事故発生時の迅速な対応

万が一事故が発生してしまったときも、遠隔臨場ならすぐに状況を確認して迅速な対応を取ることができます。

現場にカメラを常時設置しておけばリアルタイムに把握できるため、事故の状況を把握して適切な指示を出しやすくなります。天候の変化や地震など予期せぬトラブルが原因の事故も、早めに察知できれば被害が広がるのを防ぎやすいです。

事故の原因特定と対策

事故が発生してしまった場合も、遠隔臨場システムがあれば事故の原因を特定し今後の対策を考えることができます。事故発生時の状況が映像に残っていれば、どんな不備や不具合があったのか正確に分析できるでしょう。事故原因が正確なほど具体的な対策が分かりやすくなるため、同じ事故のくり返しを防ぐことができます。

遠隔臨場を導入後の現場感

遠隔臨場の導入がもたらすさまざまなメリットは、建設・土木業界全体が抱える課題解決として大いに期待が集まっています。

遠隔臨場で業務時間短縮やコスト削減が進めば、長時間労働や休日出勤といった労働環境改善につながります。結果的に建設業全体のイメージアップになり、若い人材が集まりやすくなるかもしれません。離職率の改善も期待でき、全体の熟練度がアップすることでより安全性や業務効率の向上にも取り組みやすくなります。

建設業でも2024年から労働時間の上限規制が施行される働き方改革にも、遠隔臨場の業務効率化は大いに役立つでしょう。遠隔臨場で現場での身体的な負担や危険を減らすことができれば、建設業への女性進出も期待できます。現在の体制に課題を抱えているなら、解決方法として遠隔臨場の導入を検討してみる価値は大きいでしょう。

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