こちらでは、国土交通省が公表している「建設現場の遠隔臨場に関する試行要領」から、国土交通省が遠隔臨場を推進する目的やまた実際に遠隔臨場を実施する際に、その適用される範囲や具体的な実施方法、注意すべき点などを、分かりやすくまとめています。
遠隔臨場とは、ウェアラブルカメラやネットワークカメラ等と活用して、現場に行かずに、遠隔地から臨場を行うことをいいます。通常の臨場の場合、発注者が建設現場に出向いて、「材料確認」「段階確認」「立会」などを行いますが、遠隔臨場の場合、発注者は現地に出向くことなく、オフィスなどの離れた場所から、受注者が装着したウェアラブルカメラからの映像で、施工が計画通りに行われているか、また仕様書通りの材料が使われているかの確認をすることができます。遠隔臨場は、移動にかかる時間やコストを削減できるメリットがあります。
国土交通省の「建設現場での遠隔臨場に関する施工要領(案)」には、遠隔臨場を行う目的として、現場の作業者が段階確認をする際に生じる手待ち時間の削減や、確認書類の簡素化、監督者の現場臨場を削減することで、業務の効率化を目指したいとあります。
遠隔臨場は『土木工事共通仕様書(案)』に定める「段階確認」、「材料確認」と「立会」を実施する場合に適用されます。受注者が動画撮影用のカメラ(ウェアラブルカメラ等)で撮影した映像と音声を Web 会議システムなどを利用して、確認します。確認するのが現場技術員の場合には、使用する PC にて遠隔臨場の映像(実施状況)を画面キャプチャ等で記録し、情報共有システムASP)等に登録して保管しなければなりません。
動画撮影用のカメラ(ウェアラブルカメラ等)の使用は、「段階確認」、「材料確認」と「立会」だけに限らず、現場不一致や事故などの報告時などにも利用することができます。
全国には、国土交通省管轄の8つの地方整備局があります。そして、東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、四国、九州それぞれの地方整備局で、道路、河川、ダム、砂防、港湾の整備及び維持管理、空港基本施設の整備等の事業を行っています。国土交通省が「建設現場の遠隔臨場に関する試行要領(案)」を公表していますが、実際の土木工事に関しては、各地方整備局で仕様が異なります。そのため、各地方整備局の「建設現場の遠隔臨場の試行方針」で、遠隔臨場の試行内容をしっかり確認しておくことが大切です。
当サイトでは、全国にある地方整備局ごとの「建設現場の遠隔臨場の試行方針」も紹介していますので、あわせてご確認ください。
国交省の実施要綱は「公共工事の建設現場において「段階確認」、「材料確認」と「立会」を必要とする作業に遠隔臨場を適用して、受発注者の作業効率化を図るとともに、契約の適正な履行として施工履歴を管理するため」に定められています。内容としては「適用の範囲」「遠隔臨場に使用する機器構成と仕様」「遠隔臨場による段階確認などの実施・記録と保管」の3つとなっています。
遠隔臨場の対象工種のある工事は原則全ての工事に適用されますが、通信環境が整わない現場や工種によって非効率・不十分な確認になる恐れがある確認項目は対象となりません。新規発注工事の場合は発注時に遠隔臨場を実施する旨を特記仕様書に記載することとなっており、既に契約している工事については対象工事に合致すると判断される場合に受注者へ要請し、実施可能の回答が得られた後に設計変更のうえ実施するものとされています。
また、遠隔臨場の実施にかかる費用の負担については、全額が技術管理費に積み上げ計上されることとなっています。
段階確認では「監督職員は、設計図書に定められた段階確認において臨場を机上とすることができる。」という事項に該当し、ウェアラブルカメラなどの動画撮影用機器を用いて内容に関して契約図書との適合を確かめる方法を記載しています。これは「受注者は、監督職員に施工管理記録、写真等の資料を提示し確認を受けなければならない。」という事項に該当するものであり、動画撮影機器でWEB会議システムなどを利用することで監督職員などが確認するにあたって十分な情報を得ることができる場合において、今までの現場臨場に代わって遠隔臨場を利用することが可能になるものとなっています。ただし、監督職員などが十分な情報を得ることができないと判断する場合については、受注者にその旨を伝えるとともに、機器の調整などで改善を図ることが難しい場合には現場臨場での段階確認を実施します。
現物による確認にでは、ウェアラブルカメラなどの動画撮影用機器とWEB会議システムなどを利用することで、管理職員などが確認するにあたって十分な情報を得られる場合において従来の現場臨場に代わり遠隔臨場を利用することが可能になります。これは段階確認と同様ではありますが、監督職員などが十分な情報を得ることができないと判断する場合は受注者にそれを伝え、機器調整などによっても改善を図ることが困難な場合については現場臨場による材料確認を実施することとなります。
また、工場製作工(共通)において、鋼材に JIS マークの表示がないものについては、受注者がウェアラブルカメラなどの動画撮影機器を用いて以下を確認するものとされています。
立会についても前の2項と同じであり、監督職員などが臨場にて行う行為にウェアラブルカメラなどの動画撮影機器を用い、その内容に関して契約図書との適合を確かめるための方法を記載しています。この動画撮影機器とWEB会議システムなどを利用することで、監督職員などが確認するにあたって十分な情報を得られる場合には従来の現場臨場に代えて遠隔臨場を利用することが可能となります。また、立会の工種に関しては「土木工事共通仕様書(案)」に従うものとなっており、監督職員などが十分な情報を得られないと判断する場合には受注者にその旨を伝えて機器などの調整で改善が図れない場合、現場臨場での立会を実施します。