こちらでは、国土交通省が公表している「建設現場の遠隔臨場に関する試行要領」から、遠隔臨場を実施する際、実際に使用する動画撮影用のカメラ(ウェアラブルカメラなど)の機器の仕様などを、具体的にまとめています。
さまざまなウェアラブルカメラがあり、ハイスペックな製品も数多くあります。ですから、遠隔臨場用のウェアラブルカメラをわざわざ購入しなくても、家電量販店で売られているウェアラブルカメラでも問題ないのではと思われる方もいるかもしれません。ところが、土木工事や建築・建設現場は、一般的なウェアラブルカメラを使用する条件や環境と全く異なるので、注意が必要です。
土木工事や・建設現場では、雨や土埃などは当たり前で、寒い冬から猛暑まで、過酷な条件な条件に耐えうるタフなウェアラブルカメラでなければなりません。
土木作業の現場では、作業員はヘルメットを装着しています。そのため、装着するウェアラブルカメラが重いと、現場での作業に支障が出てしまいます。また、ケーブルが必要なウェアラブルカメラだと、ケーブルが邪魔になってしまいます。
一般的なウェアラブルカメラと土木工事や建築現場で用いる遠隔臨場ツールでは、使用する環境が全く異なるために、ウェアラブルカメラに求める性能や仕様も当然変わってきます。遠隔臨場ツールに求められるのは、過酷な条件下でも問題なく使うことができ、かつ現場で働く作業員が負担なく、快適に使用することができるウェアラブルカメラであるかどうかが、非常に重要なポイントだといえます。
国土交通省の試行要領には、使用する動画撮影用カメラ(ウェアラブルカメラなど)やウェブ会議システムなどの配信に関する仕様が定められています。
国土交通省が発表している撮影に関する仕様は以下の通り。また、映像と音声は、別々の機器を使用することが可能で、夜間施工等における赤外線カメラや水中における防水カメラ等を利用してもよいとあります。
Web 会議システムなど配信に仕様は以下の通り。ただ、Web 会議システム等は通信回線速度により自動的に画質等を調整するため、通信回線速度を優先し、転送レート(VBR)は参考とあります。
下り最大 50Mbps、上り最大 5Mbps 以上
転送レート(VBR):平均 1 Mbps 以上
実際に遠隔臨場で使用するカメラは主に次のような種類があり、用途や目的に合わせて選ぶ事が大切です。
現場作業員が手を使わなくて済むよう、頭や体に装着するタイプをウェアラブルカメラと呼びます。ヘッドマウント・ボディマウントどちらも両手がフリーになるので作業や移動しながら撮影でき、メジャーや検診ロッドなどを使って打ち合わせをすることも可能です。
また手持ちに切り替えられるウェアラブルカメラもあり、状況に合わせて使い分けられるので便利です。ウェアラブルカメラを遠隔臨場に使用する場合、通信環境を整える必要があります。
スマートグラスはメガネ型のカメラデバイスで、ウェアラブルカメラと同じようにハンズフリーで使用できるのがメリット。装着者の視線をそのまま共有できるのもスマートグラスの特徴です。スマートグラスに指示やデータを表示できる製品もあり、より効率的な遠隔臨場を行う事もできます。
国土交通省の施行要領をクリアしていれば、一般的なスマートフォンやタブレットも遠隔臨場に使用できます。元々通信機能があるスマホでカメラ通話アプリを使えば、特別な機材を購入せず遠隔臨場を導入できるのがメリット。
一方発注者によっては歩きスマホを禁止しているケースもあり、移動しながら撮影できないことがあります。安全面の問題もあるため、歩きながら撮影するならウェアラブルカメラやスマートグラスを使用しましょう。
夜間工事もある現場では、暗所撮影が可能な赤外線カメラが必要になります。物体の赤外線を検出するため光源がない暗闇でも撮影でき、夜間の防犯対策としても活用できます。
起動や撮影に複雑な手順が必要なカメラでは、スムーズな遠隔臨場はできません。現場作業員のスキルに依存せず、だれでも簡単に使いこなせる操作性は重要なポイントです。
遠隔臨場の撮影中に歩き回ったり作業したりする場合、カメラの手振れ補正機能は要チェックポイントです。手振れ補正機能には光学式・電子式などの種類があり、メーカーによって採用する方式や性能が異なります。
またジンバルと呼ばれる外付けの手振れ補正装置が付属する製品も。現場の状況や使用方法に合わせて、安定した撮影ができる手振れ補正機能を選びましょう。
遠隔臨場は映像保存が必須ではありませんが、現場状況を複数スタッフで共有する場合は録画機能があった方が良いでしょう。動画撮影中の静止画撮影機能を搭載したカメラもあり、現場資料作成などにも活用できます。
カメラのバッテリー駆動時間は製品によって違うため、使用状況を想定して十分な容量のものを選びましょう。駆動時間・充電時間・予備バッテリーへの交換などもチェックしてみてください。